埼玉県比企郡吉見町に元巣神社という神社があります。
延喜式神名帳に記載されている社が3社もある吉見町(かつては横見郡と呼ばれていました)内では、さして古い時代に創建された神社ではないのですが、元巣神社の祭神が「泣沢女神(啼沢女神)」とあるのを見てびっくりしました。
「泣沢女神(啼沢女神)」は先月に読んだ「神様の御用人」というライトノベルの第一巻で登場する神様で、小説ではいつもさめざめと泣いているという性格の設定だったので、すぐに思い出しました。
本社の畝尾都多本神社を訪れたことはありませんが、一都三県の数千社を訪問してきた小生は、「泣沢女神(啼沢女神)」を祭神とする社を初めてみました。元巣神社の掲示にも、関東ただ一つの社だと説明しており、そうかもしれません。
さてこの元巣神社ですが、まだ続きがあります。
元巣神社の名前の由来は、洪水に悩まされる低湿地にある微高地(元洲)から来ているようなのですが、明治維新後の徴兵制が敷かれて以来、「元に戻る」という意味に転じて、出征兵士の無事帰還祈願が盛んになったのだとか。
ついには当時の神職は私服憲兵隊に捕らえられ追放されてしまい、江綱神社と改称したそうです。
太平洋戦争終戦の昭和20年に社号は「元巣神社」に戻したそうですが、神職が追放されてしまうというのも、現代ではなかなか想像できないことですね。