仏教・神道ではありませんがイスラムについて

イスラーム文化 書評
イスラーム文化

「イスラーム文化」を読んで

イスラムについて基礎知識を知りたく、何冊か手にとってみましたが、いままで個人的にまとめることができずにおりましたが、今回「イスラーム文化(井筒俊彦著)」を手にとって、多少なりともまとまりがついてきました。

「イスラーム文化(井筒俊彦著)」は昭和56年にイスラム学者でもある著者が「イスラーム文化の根底にあるもの」を主題とした経済人向け講演をもとに書き下ろしたもので、経済人向け講演ということもありかなりわかりやすく解説されています。

イスラム教とは一神教である

イスラム教やキリスト教が一神教であり、仏教や神道は多神教であることは頭で理解していましたが、「一神教」とは何なのかを咀嚼していませんでした。

「一神教」とは、全てを創造した「唯一神」を信じることです。目に見える自然や、自身の父母に始まる祖先などではなく、観念的な神を信じることです。

「唯一神」の教えは、そのままでは人間に伝わりませんので、「唯一神」の声を授かり、人間に伝えたのが「預言者」で、預言者モーセの言葉に従うユダヤ教、預言者イエスの言葉に従うキリスト教、ムハンマドの言葉に従うイスラム教があり、イスラムの世界ではユダヤ教・キリスト教・イスラム教を3大宗教とするそうです。
そして、この3大宗教全てが、中近東に住むセム語族(セム族)から誕生しています。

コーランは、人間生活上の全てを規程している

現在の六法全書のように網羅している訳ではありませんが、朝起きてから就寝まで、行うべき行為、行ってはいけない行為を全てコーラン(及びその解説書「ハディース」)で規程しているそうです。

分かりやすい規程が、酒は飲むな、一日定められた時間に礼拝する、などです。そして、女性は皮膚を露出させない、嘘をついてはならない、など事細かに規定されていることから、イスラーム法=コーラン・ハディースという図式になります。

イスラム教も、仏教・キリスト教のような宗派がある

全ての宗教がそうであるように、民族により「聖典」の解釈過程でローカライズ(現地化)され、宗派として分立しています。仏教の場合、中国でローカライズされ、さらに日本布教にあたり神仏習合しローカライズされています。

同様にイスラム教も、遊牧民の部族習慣を遺した教えや、ゾロアスター教(の考え方)を遺した教え、法治主義などを取り入れた教えなど様々に分かれているそうです。

日本仏教では、密教(真言宗や天台宗)と顕教(日蓮宗・浄土真宗)、或いは禅宗(坐禅により悟りを開く)・浄土教(西方浄土への極楽を願う)などの分類がなされたりしますが、
イスラム教でも同様で、人間生活上の規定を重視する宗派(スンニー派など)と、教えの内面を追及する宗派(シーア派など)に分かれるそうです。

台東区の御徒町駅近くにあるイスラム寺院

イスラム教というと、タリバーンやイスラム国など、自国成立を目指す過激派勢力を想起しがちですが、イスラム教を国教とするマレーシアやブルネイ・カタール等、また国教ではなくとも国民の大多数がイスラム教徒のインドネシア等世情の安定した国家も多数あります。

礼拝施設の用意やハラール対応など、外形的な対応も増えてきましたが、その根本思想に少し触れてみるのも面白いかもしれません。

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